スマートフォンやパソコン、クラウドサービスが生活の一部となった今、遺品整理においてもデジタル情報の扱いは避けて通れません。しかし、こうした「デジタル遺品」には個人情報や金融情報が多く含まれており、誤った管理は思わぬセキュリティリスクを招くことがあります。ここでは、デジタル遺品整理で注意すべき代表的なリスクと、その防ぎ方をわかりやすく解説します。
1. 不正アクセスによる情報流出
デジタル遺品の中には、SNS、ネット銀行、メール、クラウドなど、ログイン情報が必要なサービスが数多く含まれています。これらのアカウントを放置すると、不正アクセスや乗っ取りの被害を受ける可能性があります。特に、SNSが乗っ取られてスパム投稿や詐欺広告に利用されるケースは少なくありません。
- 防止策:
- 死亡後すぐに主要アカウントのパスワードを変更、または停止手続きを行う。
- 信頼できる家族にアクセス権を共有しておく。
- 不要なサービスは速やかに解約・削除する。
 
2. 自動課金・契約更新による金銭的リスク
サブスクリプション型のサービス(動画配信、クラウド保存、音楽アプリなど)は、自動更新によって故人の死後も料金が発生することがあります。クレジットカード情報が登録されたままの場合、気づかないうちに長期間課金され続けることも。
- 防止策:
- メールや明細書から自動課金サービスを特定し、順次解約。
- クレジットカード会社へ死亡の報告を行い、自動引き落としを停止。
- サブスク一覧を生前に作成し、家族と共有しておく。
 
3. パスワード漏えいのリスク
故人のアカウント情報が適切に管理されないと、悪意のある第三者にパスワードが流出し、個人情報が不正に利用される恐れがあります。特に、同じパスワードを複数のサービスで使い回している場合、1件の流出が連鎖的に被害を拡大させるリスクがあります。
- 防止策:
- 生前に「パスワード管理表」やパスワードマネージャーを活用して整理。
- 家族が利用できるように、マスターパスワードの保管場所を明確にしておく。
- 二段階認証を設定し、セキュリティ強度を高める。
 
4. クラウドや外部ストレージの取り扱い
クラウドや外付けHDDなどに保存されたデータは、削除や引き継ぎの判断を誤るとトラブルにつながります。プライベートな写真や仕事の資料など、他人に見られたくない情報が含まれていることもあるため、慎重な確認が必要です。
- 防止策:
- 生前に「見せてもよいデータ」「削除すべきデータ」を分類しておく。
- クラウドサービスの契約を一括で確認し、不要なアカウントを閉鎖。
- 機密性の高いファイルには暗号化を施す。
 
5. SNS・メールの悪用リスク
故人のSNSやメールアドレスが乗っ取られ、詐欺や偽情報の発信源として利用されるケースも報告されています。特にメールアドレスは、多くのサービスの本人認証に利用されているため、放置すると他のアカウントまで危険にさらされます。
- 防止策:
- 主要SNSは「削除」または「追悼アカウント化」を申請。
- メールアカウントを確認し、不要なものは停止申請を行う。
- 迷惑メールの自動転送設定などがないかをチェックする。
 
6. 安全なデジタル遺品整理の進め方
デジタル遺品の整理では、「早期確認」「権限の確認」「安全な削除」の3つが基本です。特に、相続手続きが関係する金融情報や電子マネーなどは、軽率に削除せず、法的な確認を行ったうえで対応することが求められます。整理後のデータは、暗号化して安全に保管するか、完全消去するのが理想です。
- ステップ1:パスワードと契約情報を確認する。
- ステップ2:家族で担当を決め、削除・保存を分担。
- ステップ3:最終的な削除時には専門業者に依頼して確実に処理する。
まとめ
デジタル遺品整理には、情報漏えいや不正アクセスなどのリスクがつきものです。しかし、生前の準備と正しい管理を行うことで、これらの危険を最小限に抑えることができます。パスワードや契約情報の共有、二段階認証の設定、不要なアカウントの削除など、日常的な小さな習慣が、家族とデータを守る大きな備えとなります。デジタル時代の遺品整理こそ、「安全」を意識した丁寧な対応が求められるのです。
 
  
  
  
  