遺品整理は、想像以上に体力と集中力を必要とする作業です。物量が多かったり、思い出の品が多かったりすると手が止まりやすく、時間だけが過ぎてしまうことも珍しくありません。私は動物病院で長く働く中で、ご家族が「どこから手をつけていいかわからない」と悩む姿を何度も見てきました。感情が揺れる場面だからこそ、効率的な進め方を知っておくことが大きな助けになります。
本記事では、遺品整理の現場から得られた“実践的で無理のない進め方”を紹介します。作業手順が整理されると、気持ちの負担が軽くなり、故人を思いながら丁寧に向き合う時間を作ることができます。
1. まずは「部屋単位」で区切って進める
一気に家全体を整理しようとすると圧倒されてしまいます。そのため、ひと部屋ずつ区切って進める方法が最も効率的です。
- 玄関 → リビング → 寝室 → キッチン と順番を決める
- 部屋ごとのゴールを明確にする
- 途中で別の部屋に手を出さない
「今はこの範囲だけ」と決めることで集中しやすく、達成感も得やすくなります。
2. 作業前に“動線づくり”をして効率を上げる
現場でもっとも重要視されるのが、作業前の準備です。特に、仕分け動線を整えておくことで、作業スピードが大幅に向上します。
- 「残す」「手放す」「保留」「貴重品」の4つの場所を決める
- 移動しやすい通路を先に確保する
- ゴミ袋・段ボールを部屋ごとにセットする
この準備ができているだけで、整理の進み方が見違えるほどスムーズになります。
3. “判断基準”を作ることで迷いを減らす
遺品整理が滞る最大の理由は、判断に迷うことです。家族で共有できる基準を決めておくと、作業が格段に進みやすくなります。
- 1年以上使っていない物は手放す
- 同じ用途の物は1つだけ残す
- 写真・手紙は「残すか保留」に必ず回す
判断ルールをあらかじめ作っておくことで、迷いが減り、作業が止まらなくなります。
4. “貴重品は最優先”でチェックする
遺品整理の現場では、思わぬ場所から重要品が出てくることがよくあります。
- 通帳・印鑑・保険証券
- 不動産関連の書類
- 貴金属・宝飾品
- 現金や商品券
特に書類関係は、古いノートや封筒に紛れていることが多いため、処分の前に必ず中身を確認する習慣をつけましょう。
5. 大型家具・家電は“後回し”が正解
大きな家具や家電から手をつけたくなる人もいますが、現場では後回しにする方が効率的です。
- 小物を先に整理し、部屋を軽くする
- 動線を確保してから搬出する
- 家具内部の収納物を先に取り出す
こうすることで、安全性も高まり、搬出作業もスムーズになります。
6. 大量の物がある場合は“プロを部分的に活用”
物量が多い現場では、家族だけで進めようとすると時間も負担も大きくなります。そんなときはプロの力を一部だけ活用するのも有効です。
- 回収や搬出だけ業者に依頼する
- 買取査定をしてから手放す物を決める
- デジタル遺品だけ専門家に任せる
必要な部分だけ任せることで、無理なく効率的な遺品整理が実現します。
7. まとめ:準備と段取りが“効率の良さ”を生む
遺品整理の効率を上げる秘訣は、スピードではなく段取りにあります。作業前に準備を整え、判断基準を共有し、部屋ごとに丁寧に進めることで、負担を減らしながらスムーズに整理が進みます。
遺品整理は、故人の想いと向き合う大切な時間です。無理なく、丁寧に、そして家族の心に寄り添いながら進めるためにも、ぜひ現場の知恵を取り入れて効率的な整理を実践してみてください。
