私たちの生活は、かつてないほどデジタルと密接に結びついています。スマートフォン、パソコン、クラウドサービス──。かつての「アルバム」や「日記帳」は、今やデジタル端末の中に存在しています。
しかし、もし持ち主が突然亡くなってしまったら、それらのデジタルデータはどうなるのでしょうか?それは単なるデータではなく、誰かの人生の記録であり、時には「伝えられなかった想い」です。
“デジタル遺品”とは何か?
デジタル遺品とは、亡くなった方が生前使用していたデジタル機器や、そこに保存されているデータ全般を指します。代表的なものには以下があります:
- スマホ・パソコンの中の写真、動画、音声メモ
- メールやLINEなどのメッセージアプリの履歴
- クラウド上のファイル(Google Drive、iCloud など)
- ネット銀行や仮想通貨のアカウント情報
- SNSアカウント(X、Instagram、Facebookなど)
これらは、遺された家族にとって大切な「想い出のかけら」となることもあれば、逆に「どう扱えばいいかわからない」難題にもなり得ます。
とある家族の“スマホのロック”から始まった物語
ある家族の話です。亡くなった父親のスマートフォンが手元に残されたものの、パスコードは不明。最初は何も手がつけられず、ただ置いておくだけでした。
半年後、ふとしたタイミングで「父の誕生日」でロック解除を試した長男が、偶然にも正解を引き当てました。
そこには、孫の成長記録を綴った動画や、母にあてた未送信のメッセージ、闘病中に書かれた日記アプリが残されていました。家族は涙しながらも、「パパが私たちに残してくれたもの」を受け止め、ようやく心の整理がついたといいます。
供養するように“整理”するという選択肢
こうしたデジタル遺品は、処分ではなく、供養という視点で向き合うことが大切です。
- 写真や動画は共有アルバムにまとめ、家族で閲覧できる形にする
- 本人の意図が読めるデータは、可能な範囲で読み解き、記録する
- 不要なアカウントは丁寧に削除手続きを行う(SNSの追悼アカウント設定など)
特にSNSなどは、「その人の声や存在感」が色濃く残るため、削除することに戸惑うケースも少なくありません。家族内での相談や、必要であれば専門家への相談も選択肢です。
事前の対策と“デジタル終活”のすすめ
デジタル遺品の問題は、突然やってきます。だからこそ、「自分のデータを誰に、どのように託すか」を考えることは、現代の終活においてとても重要です。
パスワードの共有や、デジタル遺言の作成、デジタル資産の整理ノートなど、取り組める方法は多く存在します。
まとめ|記憶は“データ”ではない。“想い”として残る
スマホやパソコンに残されたデータは、単なるファイル群ではありません。そこには、その人が見ていた世界、感じていた時間、遺された人へのメッセージが詰まっています。
デジタル遺品という新しい課題に向き合うとき、「どう捨てるか」ではなく、「どう受け取るか」を意識することで、遺された家族の心に深い癒しがもたらされることもあるのです。
故人の声なき声に、そっと耳を傾けてみてください。
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